WordPressは良くない選択か? | ホームページ制作時に考えること
佐門 伸二「とりあえずWordPress!」
と、まだ明るい時間の立ち飲み居酒屋での風景と錯覚するような言葉を何度か耳にしたことがあります、正直。
手放しでWordPress賞賛する状況に首をかしげながらもWordPressによる制作を主な生業として過ごしていると、今度はそこに新しい声が聞こえてきたので頭の中はすっかり「???」。
少しそのくもりをはらっておこうと思い書きました。
目次 | Index
WordPressはダメなの?
「まだWordPressでやってるの?」
「そろそろWordPressは外して考えてよくない?」
少し前の話だが、よその制作会社の方々とお話した時に最近の制作フローについての話題が出た。
正直なところ少しおどろいたし、さりげなく発言の根拠を聞いてみたが明確な意見は聞けなかった。
その少し前に、人気のある情報サイトのCMSに関する記事を見た。
読み方やとらえ方にもよると思うのだが、WordPressに代表される無料CMSへの悪意的な感情が添えられているようにも感じた。
あらかじめことわっておくと、参考記事に反論を投げるという意図は全くない。
(※)ストローマン論法的な話題の展開が目立ってはいたが、多くの点では納得(というより同意)しながら読みもした。
(※)ストローマン:
ストローマン(英: straw man)は、議論において対抗する者の意見を正しく引用しなかったり、歪められた内容に基づいて反論するという誤った論法、あるいはその歪められた架空の意見そのものを指す。
藁人形論法ともいう。
この記事を書こうと思ったのは、SNSで多数シェアされている記事や知人達との話題をきっかけに「近ごろどうも根拠の無いWordPressをバッシングする風潮が出始めているのかもしれない」と感じたことをきっかけに、
「なぜ自分は製作時にWordPressを大きな選択肢の一つとするのか?」
ということを自分の中であらためて明確にしてみたからである。
WordPressは実際は安いのか、高いのか?簡単なのか、難しいのか?
「WordPressは安い!早い!簡単!」
という言葉が巷ではまことしやかにうたわられるらしい。
実際に耳にしたことはないのでほとんど都市伝説かと思っていたのだが。
まず多くのことを省略するが、WordPressはGNU General Public Licenseの下で無料配布されている、Webサイト構築のためのCMSとしてもしばしば利用されているオープンソースのブログツールである。
利用条件や制約にもとづいた上で「誰でも無償で自由に使用、複製、改変、再配布」できるということである。
- WordPressは無料で入手・使用できるブログツールである。
- WordPressに変更やカスタムなど手を加えて使用できる。
- ブログツールであるWordPressでWebサイト制作ができる。
- ブログ投稿形式で情報発信(更新)が簡単にできる
以上の点が「WordPressは安い!早い!簡単!」とうたわれる(吹聴する・される)大きなポイントだと思う。
安いの?
まず、無償のWordPressを改変・カスタムしてWebサイト制作に使用することは決して安いことではない。
そのための知識・スキル・経験が必要なのは言うまでもなく、それは「無料!」でも「安く!」でもないのである。
早いの?
次に、デザイン・コーディングという工程があげられる。
WordPressでは「テーマ」と呼ばれるデザイン・機能を司るシステムによってWebページとして表示され、そのテーマを構成する主要なファイルの中にテンプレートファイルと呼ばれるファイルがある。
この「テーマ(テンプレートファイル)」=「テンプレートを用いて制作」するというイメージを持って(盛って?)いる方がたも少なからず存在するようである。
WordPressでのWebサイト制作は、テンプレートをそのままWebサイトに適用するわけではないため通常の制作フロー(設計・デザイン・コーディングなどの作業)が行われると考えていただいて問題ない。
このストローク(工程)も省略できる・されるものではないため決して「早く作れる!」わけではない。
簡単なの?
さらに、クライアントの要望やヒアリング後の提案に沿うよう定義された要件を実装していくためには相応の知識やスキルが必要である。
その範囲はHTML/CSSにはとどまりきらないのも事実であるので、決して「簡単!」とは言えないだろう。
これらのことから、
「WordPressによるWebサイト制作は、決して安くも早くも簡単でもない」
ということが理解していただけると思う。
Why WordPress? – なぜWordPressなのか?
では、なぜ「安くも早くも簡単でもない」WordPressをWebサイト制作での選択肢にするのか。
たしかにWordPressによる制作を重ねて慣れてくると、
- 自分なりの制作フローがある程度確立される
- 自分がカスタムしやすいように作成した「テーマ」を保有する
- プラグインに頼る箇所と独自カスタムする箇所を明確にしている
などの経験によって作業スケジュールと内容を効率化 = 早く制作することは可能である。
しかし、それは制作者サイドの都合でしかない。
通常のシンプルな制作フローでは、クライアントのWebサイトへのご希望・ご要望から調査・企画・提案を行い成果物のイメージを導出してから共有するのである。
その段階で制作規模やサイト構成から公開後の運用や変更およびリニューアルも考慮するのである。
そこで導き出した要件を実現するための選択肢の一つとしてWordPressを採用している。
制作の「前提」ではなく制作「手段」の一つがWordPressなのだ。
当たり前のことではあるが、必要やメリットが大きいと判断した場合はWordPressによる制作を提案するのである。
おまけ
少し前の話になるが、あるWebデザイナー・制作者さんのTwittterのつぶやきを偶然見つけて大きくうなずいたことを思い出した。
CMSを「お客様がサイトを自由に更新できるツール」などと称して売り込むのは間違いだと思う。CMSってのはお客様と制作者の間に縛り(ルール)を作って役割分担をはっきりさせるためのツールなんだ。そのルールをちゃんと話し合って決めて共有しないといけない。そこを勘違いしない。
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) May 13, 2014
言葉は悪くなるが制作者側でも「ネコも杓子もWordPress!」という傾向はあったと感じていた時期にこのつぶやきを目にした。
そのことが「WordPressを選択するメリットや根拠」について自問する良いきっかけになった。
自分は、WordPressを制作側とクライアント側の各サイドの領域を明確に線引してお互いの作業や担当する領域を明分化する上でとても便利なCMSである、と考えている。
投げられた要望に対して柔軟に対応して実現してクライアントの利便性や便宜をはかり、公開後もクライアントと一緒に検証や改善に頭をひねるというスタンスの自分には、WordPressはとても大きな選択肢なのだと思う。
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