スマホカメラで写り込みを抑えて撮る方法【写真Tips 第7回】
松寿 英次こんにちは。
前回のブログでは、透明なグラスを綺麗に写す方法として、蛍光灯の真下で撮るというお話をしました。グラスに写り込む蛍光灯の光源をトレーシングペーパーで和らげるとういう小技も紹介しました。
その時、グラス自体はうまく撮れていたのですが、実は大きな課題にぶつかっていたんです。
それは、他にも試し撮りを行って、うまくいくことを確認していたときのこと。あるものを撮ろうとして、スマホを持つ手が止まりました。
そう、ピカピカ鏡面のステンレス製品です。周囲の部屋の様子や撮影者自身が大きく写ってしまいました。「うわぁ〜、これはまいった!」です。
今回は、この強い写り込みをどうやったら解消できるかというお話です。
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写り込みが起きない条件とその実現性
この写り込み、かなり手ごわいです。計量カップは全周にわたって写り込んでいるので、もはや前回のようにトレーシングペーパーをかざしたところで無意味です。
周りを写り込ませないようにするには、どうすればいいのでしょうか?写り込みが起きない条件を考えてみます。
1.周りが真っ白であること。
2.カメラと撮影者が撮るものから遠く離れていること
3.カメラと撮影者自身も真っ白であること
1は、普通の室内ではまず無理だと思います。理想は壁も床も天井も白くて、窓がなく、室内に物もない空間です。つまり、それはもう撮影スタジオですね。
2は、カメラと撮影者の写り込みを小さくするための対策で、デジカメを最大ズームにして、できるだけ離れて撮れば効果がありそうです。でも、使用するのはスマホの標準カメラ機能なので、離れて撮ることはできません。
3は、2の離れて撮ることができないなら、カメラも撮影者も白くなってしまおうという発想です。例えば、全身白づくめの服を着て顔もカメラも白い布で覆って…まあ、大変なのでやらないと思います。
ということで、今回求めている条件を手軽に実現するのは難しいことがわかります。
世の中の商品写真はどうなってる?
今回の課題、なんとかクリアできないでしょうか?
考える前に、世の中の写り込みの強い商品写真はどんなふうに撮られているのか見てみました。画像は掲載しませんが、いろいろ見ているうちに、大きく2つの撮り方に分かれていることに気がつきました。
A.やはり全景が白い空間で、写り込みをなくして撮っている。
B.商品のイメージや特徴に合わせた背景を意図的に写り込ませている。
例えば、ステンレスの調理器具なら、ほとんどが白空間で撮られていると思いました。そして艶感を出すために何かが意図的に写っているものもありました。
サイズの大きい自動車の場合、どのメーカーも2種類の写真があって、ひとつは写り込みが全くないボディの艶と色だけがわかる写真。もう一つは、その自動車の使用シーンやグレードに合わせた背景を積極的に写り込ませた屋外写真です。
いろいろな写真を見てわかったことは、写りこみがきちんとコントロールされているということです。写り込ませないだけでなく、意図的に写り込ませることで、より雰囲気のある写真になっていました。
周囲も撮影者自身の写り込みも消すには
さて、高度な撮影技術の上に成り立っている商品写真の世界を垣間見たところで、今回の課題をクリアする方法を決めました。
今回は、写り込みをなくした写真を撮ることにします。つまり、白い空間を作ってその中で撮ることにしました。
ということで、さっそく撮影準備に入ります。
まず、いつもの白背景のセットの代わりに、画用紙を筒状に立てて、その中に商品を置いて撮ってみます。手軽に白空間を作成して、その隙間から撮るという作戦です。しかし…
う〜ん、普通に売っている画用紙のサイズでは、囲いきれませんね。でも蛍光灯の真下なので白い紙筒内に光がきれいに回っています。試しに撮ってみると…
前面の写りこみだけ残って、かえって不自然になりました。360度全周を囲ってしまわないと効果がないことがわかります。これはもう画用紙をちまちま切り張りするだけでは解決できなさそうです。
超低予算で撮影BOXを自作する
ここで作戦変更です。これまで撮影機材の主役に据えてきた画用紙をやめて、本格的な撮影スタジオを作ることにしました!
といっても、小さな白い箱です。小物程度ならいつでも手軽に撮影できる小さな撮影BOXを自作しようと考えました。目指すは超低予算で、短時間で、市販のブツ撮り用機材を上回る出来です。
というわけで、早速ホームセンターに行って、撮影BOXを作るのに必要な材料を買ってきました。
発砲スチロールの板と画用紙、そしてガムテープと木工ボンド、さらに半透明のゴミ袋が主な資材です。これでたったの1000円です(カッターナイフは含まず)。
まず、発砲スチロールの両面に木工ボンドで画用紙を貼り付けます。こうすることで、強度のない発砲スチロールを強くすることができます。強度のあるスチレンボードを使えばこの貼り付け作業は必要ありませんよ。今回は超低予算を目指しているので、このやり方です。
少し乾いたところで、必要なサイズに資材を切り出します。
これをガムテープで組み立てて、箱の形状にします。
最後に半透明のゴミ袋を天面に貼り付けると…
撮影BOXの完成です。所要時間は買い出しも含めて4時間くらいでした。
撮影結果はどうか?
箱を作るまではうまくいきました。では、肝心の写りはどうでしょうか?
上の写真では、天面に光を照射するための電気スタンドが一緒に写ってますが、今回は蛍光灯の真下での撮影にこだわります。スマホと箱と蛍光灯、この最小限の組み合わせでいい結果を出したいと思います。
とはいえ、蛍光灯だけで十分な光を得ようとすると、できるだけ光源に近づけないといけません。なので少々無茶ですが、台を重ねて高さを稼いだところに撮影BOXを置きました。天面に貼り付けた半透明ゴミ袋のフィルムが上からの光を透過させるので箱内は暗くなりません。
見た目は悪いですが、箱内を見てください。真っ白に写っています。箱内が十分な光で満たされているのがわかります。
さっそく撮ってみます。しかし前面が開口していては、最初の紙筒のときと同じなので、小さな窓を開けた画用紙で塞ぎます。
小窓からカメラを向けて、一枚目と同じアングルになる位置から撮ってみると…
おお!見事に周囲の写り込みが消えました。そして予想通り小窓だけが残りました。あとは覗いている小窓以外を白紙で塞いでしまえば完璧です。
さて、余計な小窓を塞いで最後の撮影ですが、ここでもうひと工夫だけしてみます。先にいろいろ見てみた商品写真の中で、ステンレスの調理器具は何かを意図的に写り込ませてツヤ感や高級感を出してました。あれをやってみたいと思います。写り込んでもよくて、ツヤ感が出るもの。それを仕込んで撮ってみると…
やった!うまくいきました。写りに深みが出て、ツヤ感も増しました。これはどうやったのでしょうか?最後に種明かしです。
そうです。箱の内側に黒紙を張ったんです。場所は左右と前面です。これによって、箱内に白と黒のコントラストが生まれて、引き締まった写りにすることができました。
まとめ
■写り込まない条件は手軽には得られません。
■写り込みは、なくすのではなくコントロールするものでした。
■撮影BOXを作ってみたら効果は絶大でした。
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